ホラー映画が好きで、特に昔ながらの“ゾンビ”や“ドラキュラ”、そして『エクソシスト』のような古典ホラーを観て育ってきた自分にとって、2023年のリメイク『エクソシスト 信じる者』は気になる存在でした。
今回は、あの1973年版と最新作を実際に観比べてみて、「どこが違うのか?」「怖さはどう進化したのか?」を自分なりに整理してみました。
ホラー好きの同世代の方にも伝えたい、“旧作とリメイクの本質的な違い”と“信じること”の意味について、できるだけわかりやすくまとめています
🔹『エクソシスト 信じる者』とは(作品概要・あらすじ・キャスト)
2023年に公開された『エクソシスト 信じる者(The Exorcist: Believer)』は、あの伝説のホラー映画『エクソシスト』の“正式な続編”として注目を集めました。ホラー映画の名作として名高い1973年版から実に50年後の作品ということで、旧作ファンの間では「なぜ今?」という期待と不安が交錯した作品でもあります。
物語は、ひとりの父親ヴィクターと娘アンジェラを中心に展開します。ある日、娘とその友人が謎の失踪を遂げ、3日後に発見されるも、明らかに“何か”に取り憑かれていた。そこで、かつて娘リーガンを悪魔から救ったクリス・マクニール(旧作の登場人物)を訪ねるという、過去との繋がりが描かれるのが本作の特徴です。
主演にはレスリー・オドム・Jr(ヴィクター役)とリディア・ジュエット(アンジェラ役)。さらに、1973年のオリジナルで母親役だったエレン・バースティンが同じクリス役で登場する点も、『エクソシスト 信じる者 感想』として多くのファンに評価されているポイントの一つです。
“悪魔と向き合う”というテーマに加え、今回は「信じるとは何か」が物語の大きな核になっており、ただ怖いだけではなく、“問いかけるホラー”として進化しています。
🔹1973年版『エクソシスト』とは(原点の紹介・時代背景)
1973年に公開された映画『エクソシスト』は、ホラー映画史を変えたとされる伝説的作品です。そのインパクトは絶大で、当時の観客の中には気絶や嘔吐を訴える人もいたほど。今でも“ホラー映画 名作”として必ず名前が挙がる作品です。
原作はウィリアム・ピーター・ブラッティによる同名小説で、実在の悪魔祓い事件をモデルにしています。監督はウィリアム・フリードキン。主役は12歳の少女リーガン(リンダ・ブレア)と、母親クリス(エレン・バースティン)、神父たち(メリン神父・カラス神父)でした。
時代背景として、1970年代初頭のアメリカは、ベトナム戦争や社会不安、宗教離れといった問題を抱えており、人々は“目に見えない恐怖”に対して敏感になっていました。そんな中で『エクソシスト』が問いかけた「信仰」「神と悪魔の存在」といったテーマは、単なる恐怖を超えた強烈なメッセージとして刺さったのです。
旧作は、今見ても色褪せない完成度と恐怖表現で、ホラー好きなら避けて通れない傑作です。『エクソシスト 比較』を語るうえで、まずはこの1973年版の存在感を理解しておくことが重要です。
🔹ストーリー構成の違い(母娘→父娘、神父の扱い、悪魔の描き方)
『エクソシスト』リメイク版と旧作の最も大きな違いの一つは、物語の中心となる親子関係の構図です。1973年版では、女優である母クリスと娘リーガンの“母娘の絆”が軸となっていました。親としてどう守るか、どう信じるかという苦悩が、悪魔の存在と重なりながら深く描かれていました。
一方、2023年の『エクソシスト 信じる者』では、主人公が父親ヴィクターであり、物語は“父娘の物語”として再構成されています。この変更により、「父性とはなにか?」「信じる力とは?」というテーマが際立ちます。特に、妻を亡くし“ひとり親”として娘を守るヴィクターの姿は、現代の家庭環境を映し出すかのようです。
また、1973年版ではメリン神父とカラス神父というふたりの神父の存在が物語の“救済の軸”として非常に大きな役割を果たしていました。とくに、信仰を失いかけていたカラス神父の葛藤と再生は、映画のクライマックスに大きな感動を与えました。
それに対し、『信じる者』では“神父”という存在そのものが前面には出ず、代わりに複数の宗教者が登場し、カトリックに限らず多宗教的な“集団による祈りと儀式”が描かれます。これは多様性の時代に合わせたリメイクの試みでもあります。
悪魔の描き方についても変化が見られます。旧作では「パズズ」という実名を持つ悪魔が強烈なビジュアルで登場し、観る者に“圧倒的な邪悪”を突きつけました。それに対し、リメイクでは悪魔の存在はより抽象的で、どこか“人の中にある恐れ”のようにも感じられます。これは「悪魔とは外にいるのではなく、自分の中にあるかもしれない」というメッセージ性を強めているようにも受け取れます。
こうしたストーリー構成の違いは、『エクソシスト 比較』の中でも非常に重要なポイントです。単なる焼き直しではなく、時代の価値観に応じて再解釈された構成が、リメイクの“意味”を際立たせているのです。
🔹演出と映像表現の違い(音・光・特殊効果・テンポ感)
1973年版の『エクソシスト』が今なお“ホラー映画 名作”として語り継がれている理由の一つに、「恐怖演出の完成度」があります。特に音の使い方が秀逸で、「静寂」と「突発音」の落差によって観客の神経を研ぎ澄ませ、心臓を撃ち抜くような演出がなされていました。加えて、実際のメイクと体当たりの演技による“リアルなグロテスク表現”も特徴で、視覚と聴覚の両面から観る者を恐怖に引き込みました。
一方、2023年版の『エクソシスト 信じる者』では、音響技術の進化がそのまま“恐怖演出”に反映されています。サラウンド音響や重低音を駆使し、包み込むような音圧でじわじわと不安を煽ります。また、光の使い方とくに暗闇とフラッシュの切り替えや、影の演出などにも現代的な工夫が見られ、旧作とは異なる“空間的な怖さ”を演出しています。
テンポに関しても大きな違いがあります。旧作はゆっくりと恐怖を積み上げていく“静かな恐怖”を大切にしていましたが、リメイクは比較的スピーディーな展開で、観客の集中を切らさない工夫がされています。この点は、現代の視聴者の“情報処理スピード”に合わせた演出とも言えるでしょう。
また、旧作はCG技術がなかった時代に制作されたため、すべてが実写による特殊効果。逆にそれが“本当に起きているような錯覚”を生みました。リメイクではCG技術をふんだんに取り入れ、映像としての美しさや恐怖演出の自由度は上がった一方で、「リアルな恐怖」という観点では旧作に軍配が上がると感じる人も少なくありません。
このように、『エクソシスト リメイク 評価』を語る際には、単なる“怖さの強弱”だけでなく、「どう恐怖を伝えようとしたか」という演出の違いを理解することが大切です。時代が変われば、恐怖の形もまた変わる。その進化こそが、リメイク作品の“今のホラーとしての意義”を物語っているのです。
🔹宗教観・恐怖のテーマ性の違い(信仰の意味、悪魔の象徴)
『エクソシスト』という作品を語るうえで避けて通れないのが、「宗教観」と「恐怖の本質」です。1973年版はカトリック信仰を中心に据えた物語構造になっており、特に神父たちが“信仰の力”を取り戻しながら悪魔に立ち向かう姿が描かれていました。メリン神父はすでに悪魔祓いの経験者として登場し、カラス神父は母親を亡くしたことによって信仰心を揺らがせている状態。そんな彼が最後には「自らの命を賭けて悪魔を道連れにする」という展開は、神と悪魔、信仰と疑念という対立の中で「人間の選択」が問われていたのです。
つまり旧作は、“信じきれない時代の中で、なお信じようとする者の物語”でした。
一方、2023年版『エクソシスト 信じる者』では、宗教観がより広く・多様に描かれています。カトリックの司祭だけでなく、他宗教(福音派、ヴードゥー、民間信仰)なども登場し、それぞれの“信じ方”が集結して悪魔に立ち向かう構図になります。これは、宗教がひとつの正解である時代ではなくなった現代において、「信仰とは何か」を観る側に問いかける構造となっています。
また、リメイク版の特徴として、悪魔の描き方がより抽象的です。名前も明示されず、外から来た“存在”というよりは、家族の間にある隙間、不安、葛藤といった“内側の闇”が具現化しているかのような演出がなされています。これは、“悪魔の正体とは何か?”という問いに対して、「人間の心にある脆さや喪失感こそが悪魔の入り口」という、より心理的なアプローチを取っているとも言えます。
このように、『旧作との違い』を比べてみると、リメイクでは“恐怖の根源”が宗教そのものから“信じるという行為”へとシフトしているのがわかります。だからこそ、タイトルにある「信じる者」という言葉がより重みを持って響くのです。ホラーというジャンルでありながら、信念と喪失、そして再生のドラマが中心にあることこそ、リメイク版が挑戦した“新しい恐怖の形”なのです。
🔹それぞれの評価とSNSの声(IMDb・Rotten Tomatoes・Xなど)
映画を観る前に「評価」をチェックする人は多いと思います。特に近年はIMDbやRotten Tomatoesなどのレビューサイト、そしてX(旧Twitter)などのSNS上でのリアルな反応が重要な判断材料になっています。ここでは『エクソシスト』旧作とリメイク、それぞれの評価と世間の声を比較してみましょう。
まず1973年の『エクソシスト』は、IMDbで8.1、Rotten Tomatoesでは批評家スコアが84%、観客スコアが87%と非常に高い評価を維持しています。50年経った今でも“ホラー映画 名作”と呼ばれる理由は、単に怖かったからではなく、「映画としての完成度の高さ」「時代を超えて伝わるテーマ性」にあります。
一方、2023年版『エクソシスト 信じる者』の評価はやや厳しいものとなっており、IMDbは5.1、Rotten Tomatoesでは批評家スコアが22%、観客スコアも比較的低め。理由として多く挙がっているのは、「旧作と比べると怖くない」「宗教観がぼんやりしている」といった意見が目立ちます。
しかしSNS(X)上では、もう少しバランスのとれた声も見られます。たとえば、
「旧作ほどの衝撃はないけど、現代的なテーマとしては深い」
「多宗教の共闘は面白い発想。信仰ってなんだろうと考えた」
「親子の愛情が前面に出ていて、泣けた。ホラーというよりドラマだった」
といったように、ホラーとしての“怖さ”は物足りないとしながらも、「考えさせられる」「人間ドラマとしては評価できる」という声も多くあります。
このことから、『エクソシスト リメイク 評価』を見極めるには、「何を求めて観るか」が鍵になってくると言えるでしょう。純粋な“恐怖体験”を求めるなら旧作、心をえぐるような“問いかけの物語”として観るならリメイク。それぞれの良さと受け止め方が、世代や観る人の価値観によって大きく分かれていることがわかります。
🔹どちらがおすすめ?(新規・懐古・ホラー初心者へのアドバイス)
「エクソシストって気になるけど、どちらから観ればいいの?」
この疑問は、旧作ファンだけでなく、新しく作品に触れる若い世代や、ホラー映画に不慣れな人にも共通するものです。ここではそれぞれの視点から、どちらを観るのがよいかをアドバイスしていきます。
まず、ホラー初心者や若年層におすすめなのは、2023年のリメイク『エクソシスト 信じる者』です。理由は2つ。ひとつは映像やテンポが現代的で、入りやすい構成になっている点。もうひとつは、“信仰”や“恐怖”の描き方が抽象的であり、直接的なグロ描写や衝撃的な演出が少ないぶん、心の準備がしやすいからです。
一方、70年代からの映画ファンや、「本当に怖いホラー」を求めている方には、1973年版の旧作が断然おすすめです。『エクソシスト 比較』の中でも、旧作は“圧倒的なリアリズム”と“精神的恐怖”を両立させた映画史に残る傑作です。カラス神父の苦悩やリーガンの変貌といった細かな演技は、今見てもまったく古びていません。
また、旧作をすでに観ている人がリメイクを観る場合は、単に「続編」という目線よりも、「時代が変わると“恐怖の定義”も変わる」という観点で観るのが楽しむコツです。宗教の位置づけや家族構造の違いを意識して観ると、『信じる者』の意義がより深く理解できるはずです。
逆にリメイクから入って興味を持った方は、ぜひ旧作にも触れてください。50年前の作品ながら、なぜ“ホラー映画 名作”と呼ばれ続けているのかを実感できます。そしてその対比の中で、リメイクが何を新しく描こうとしたのか、その狙いがより明確になります。
結論としては
【ホラー初心者・現代的テンポ派】→ リメイクから
【ホラー上級者・精神的恐怖派】→ 旧作から
【どちらも観る派】→ 旧作 → リメイクの順番がおすすめ
それぞれの入り口に合わせて、自分に合った“恐怖の扉”を開いてみてください。
🔹まとめ(今こそ“信じる者”を観る意味とは)
『エクソシスト』というタイトルには、“恐怖”以上の意味が込められています。それは、神と悪魔、人間と運命、そして「信じる」ということそのものを問い直す物語だからです。
1973年版『エクソシスト』は、神を信じきれない現代人に“それでも信じる価値はあるのか”を問う作品でした。ホラーという形を借りながら、社会の不安、母子の絆、信仰と理性の対立といった普遍的なテーマを、圧倒的なリアリズムと演出で描ききりました。まさに“恐怖の原点”とも言える存在です。
一方で2023年の『エクソシスト 信じる者』は、「恐怖そのもの」よりも、「信じるという行為の意味」をより強く打ち出した作品です。宗教の多様化、家族の形の変化、社会全体の“見えない不安”を背景に、信仰や愛をテーマにした新しい問いかけを試みています。
つまり、“音量やエグさで驚かすホラー”ではなく、“静かに心を揺らすホラー”へと進化したとも言えるのです。
そして何より、リメイクを通じて旧作が再評価され、50年という時間の重みが映画に新たな意味を与えています。だからこそ今、「信じる者」を観る意味があるのです。
恐怖とはただの“驚き”ではなく、“自分の内側にある不安とどう向き合うか”でもあります。
その恐怖を通して、自分は何を信じ、何に怯え、何を乗り越えようとしているのか
『エクソシスト』は、その答えを静かに、そして深く問いかけてくるのです。
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